BACTERIA / "S C U M"

「その悪魂、ノイズ・ギターに憑依す。」

■スカムだ。この御時世にまったくもってスカムだ。 もう結成して10年以上になるのに、その音塊はますますエスカレートしていき、ライブにおいても全くの衰えを覚えない。 鬼迫。悪魂の咆哮。激流。凄まじい音像だ。 フォークソング、青春パンク、ラブバラードが街に溢れる世の中、自己中心的御無礼で、まるで暖かみの感じられないバクテリア・サウンド。

■俺はこいつを渋谷のど真ん中、街宣バスから爆音で聴かせたい。

text : narasaki (COALTAR OF THE DEEPERS)

BACTERIA

: : profile --

■1980年代半ばより、カワグチを中心としたノイズ・ユニットとして、活動開始。即興演奏のライブやテープ制作を行っていた。 既にこの時期に打ち込み+生演奏を大音量でやるというスタイルは確立していた。 1992年頃からバンド編成になり、本格的な活動がスタート。この頃はハウス寄りのオールナイトのクラブ・イベントに出演する一方で、オルタナ寄りのライブハウスの企画にも参加することも多く、アルバム2枚、オムニバス数枚リリース、ツアーを数回行うなど、積極的な活動をみせていた時期である。1995年には大幅なメンバーチェンジによる活動停止期間があり、同時にレーベルからも離れ、活動再開後は下北沢や高円寺での自主企画を中心に、ときには限定アイテムを販売するなど、地味な活動を続ける。この頃からハードコア系との共演が増え、サウンドもますます荒々しくなっていった。 その後は、マイペースながらも録音作業及びライブを中心に活動を継続し、その近年の活動の集大成として、9年ぶりのフル・アルバム" S C U M "をリリース。

BACTERIA / "S C U M" (fecd-0012)
[2003.6.18 out] 2,500yen(tax in)
img
  1. OVERTURE
  2. WIRED
  3. WIPE OUT
  4. RISING GRUDGE
  5. TEMPLE
  6. SPINOZA
  7. UNIVERSE
  8. FEED (cloudy flow)
  9. WATER HOUR
  10. OVERDRIVE
  11. KILL (how to kill a tree)
  12. DIMENSION
  13. SETTING GRUDGE
  14. CLOUD
  15. DESPAIR
  16. SCUM
notes --
Directed by Grand Fish/Lab - Distribution by FENICE CO.,LTD.
-- June 2003 release --
member --
TOYOKI KAWAGUCHI:VOICE. GUITAR. SAMPLES. METALS.
HIROSHI SUZUKI:BASS. VOICE.
ATSUTOSHI "DEN" OHKOUCHI:DRUMS. VOICE. PERCUSSION. TRUMPET.
with
KAGAWA (MONEY IS GOD):GUITAR.
NAKAI (COLORED RICE MEN):SAX.

: : disc review --

■1987年から活動を継続するバクテリア。 80'sニューウェイブの血を受け継ぎつつ、ノイズ、テクノを飲み込んだヘヴィ・ジャンクでゴシック・ハードコアな世界観は、非常にユニークで嬉しい存在だ。殺傷力に満ちた音塊が渾然一体となったカオス・グルーヴを展開し、ダンス衝動と脳細胞を死滅させる快感が同時に楽しめる作品。

text : 岩崎一敬(BISCUIT)

■耳に突き刺さるささくれ立ったノイズ。憎々しげに吐きだされるその音に、一瞬息をのむ・・・。とにかく音の歪み方がハンパじゃない。スワンズやゴッドフレッシュなどを彷彿させる重苦しさ。おそらく、この音で聴き手をかなり限定してしまうだろう。それは致し方がない。が、その関門をくぐり抜けた者を、今度はキャッチーなリフと始終攻めたてるリズムが出迎えてくれる。このリズムとリフの応酬に乗れさえすれば、きっと今作の虜となること違いなし。その意味では、マッドカプセル・マーケッツやアタリ・ティーンエイジ・ライオットなどと関連づけて聴くことも不可能ではないだろう。そして、由緒正しい(?)ノイズ系、激重インダストリアル系の血を受け継ぎつつも、やはりフロアでの経験が物を言うのだろうか、快感のツボを押さえてもいる。そんなユニークさがこのバンドのオリジナリティーである。ただし、この作品から感じ取れるのは、決して爽快さでも前向きな闘争本能でもなく、どこまでもネガティヴで不健康な精神状態である。あくまでもネガティヴ一直線。いくら聴き手のグルーヴ感を刺激しようとも、どこかどんよりした殺意が潜んでいる。このゾッとする感覚、個人的には大歓迎だったりする。と書くと性格疑われるかな?でも肥大化した悪意そのものには共感できないとしても、それをなんの躊躇もなく押しだしてしまう良い意味での良識のなさ、とても魅力的に見える。ノイズとはそもそも人間にとって不快な音であったはずで、しかしそれをあえて全面に出すことで別の快感を生み出そうとしたのものである。彼等はそんな「負」の音に、ある種の分かりやすさをまぶして、より噛み応えのある音楽を創り上げた。そこに彼等の経験値の高さ、フロアで培った現場感覚の鋭さが表れていると思う。こんなにも過激なこの作品は、是非とも大音量で聴くべきだ。そして、この轟音の飛礫を一身に受けるべきだ。むろん、ライブに出向いて生で体感するのがベストであること言うまでもないが。

OVERGROUND VOL.8 3-1

■これは悪意なのか。ギター、ベース、ドラムス、サックス、声から一斉放射される激しいノイズが空間を覆い尽くす。極悪な条件で録られた海賊盤のように割れ歪んだ音。公害汚染された大気越しにプログレ曲の進行を眺めるような、酸性雨越しにインダストリアル音の動止を眺めるような、そんな感覚に陥る。ノイズの向こう側で演奏されている音楽は曲の体を成していてヴァラエティに富んでいながら、いかんせん有刺鉄線の如く張り巡らされたノイズに遮られ、そこへ気軽に近づくことができない。この音はなぜこうなのか。商品化され量産されて短期間で消費されていく商業音楽へのアンチ表明なのか。それをノイズで批判しつつ価値観の破壊を図っているのだろうか。それとも心がむず痒くて仕方ない人がノイズで心をがりがり掻くための、ある種の癒しの音楽なのだろうか。あるいは世の偽善を喝破して現実の姿を提示した猛絶なる告発サウンドなのか。はたまた彼らにとってノイズはただ、感情が暴れられる領域を無制限に拡大するための表現欲のブースターなのだろうか。そうやって音の鳴りを制御してしまう要素のいっさいを排除して、完全なナチュラルな空間を現出させているのか。おそらく正解は教えてもらえない。正解もどうせノイズにかき消されて聞こえない。そういうこの音に、僕はなんらかの思い入れを抱いたり共鳴したりはできなかった。苛烈な音に免疫はあるつもりだが、同時に、美しくバランスが取れたメロディアスな音楽も嫌いじゃないから。バクテリアの鳴りに同意し切れないのかもしれない。それだけ彼らの表現は痛いところを半端なく突いてくる気がする。気に入るかどうかはともかく、一度会ったら忘れられない存在だ。その正体はライブで大音量で浴びないと分からないのかもしれない。ライブでの鳴りは凄まじい快感を呼ぶドラッグなのかもしれない。ただの悪意なのかもしれないけど。

OVERGROUND VOL.8 3-2

■三十代を越えたあたりになって、朝4時まで呑んだ次の日になると、あまりに体がダルダルであることに対し「こういう呑み方は、もう出来ん。もう若くない。卒業だ!卒業!」と体の衰えを非常に痛感する人も多いのではないだろうか。ロックもそれと同じように「こんなの聴くのも、卒業だな〜」と一般の人々は、若い頃聴いていた音楽をいつしか止めていく事が多い。町田康『へらへらぼっちゃん』の一節でも「ロックというのは、ある音楽の形式を意味する言葉でなく、三十歳以下の人達による、音楽を通じての、社会的・精神的の運動、もしくは風俗の形を意味する言葉であり、人々は空疎なロマンを語るのではなくして、ある等身大の自己をロック音楽によって表現し、おもに十代の人たちが、そこに自身を重ね合わせて、ロック音楽を熱狂的に支持してきた、という経緯がある」とある。つまりロックというのは音楽でなくて“生き方”(それも三十歳以下限定)という捉え方がなんとなく根付いてしまい、三十歳を越えて「オレ、ロック聴いているぜ」と言った日にゃ罵倒や軽蔑の対象となってしまうから一般の人々は聴くことを止めていくのだろう(?)。さて、「オレもいい年だし、ロックは卒業かな〜」と諦めモードになったら、本作のような激重音楽を聴いて「卒業か否か?」を決定すればいい。シンバル・バスドラが雷撃の如く打ち続けられ、ギター・ベースがカオティックに鳴り続ける・・・。ボアダムスの『スーパールーツ5』のようなノイジーな音世界とスレイヤー『レイン・イン・ブラッド』の攻撃性が融合した過激な音楽。誰もが心の内側に持つ“暴虐的衝動心”を本当に煽る。理屈はいらない。ただ単に殺傷力とスピード満点のサウンドが気持ち良い。やっぱロックは、ヤバイ音でないとダメなんだと再確認してしまいます。呑んで疲れ切った朝、この音楽を聴いて「さぁ、もう一件!」と言える人は本当に素晴らしいと思う。

OVERGROUND VOL.8 3-3

: : release --

■テクノ、ハードコア、エモ、モダン・ヘヴィといった幾つかの時流のサウンドを突き抜けて、今作では彼らの原点である "ノイズ" の到達点を目指す。楽曲自体はある意味ポップな面も持ち合わせている。しかし、そのささくれだったサウンドは、あまりに騒々しくてやかましく、とっつきにくいかもしれない。だが、このサウンドこそ、彼らの追求するドラッグ・ミュージックであり、最高のトランス・ミュージックであるのだ。カセットMTRでレコーディングされたベーシック・トラックをハード・ディスクで編集、その後デジタル・マスターリング。この作業を数回繰り返し、約3年の歳月を経て、ようやく完成。その結果、"疾風怒濤" "完全燃焼" "大気圏突破" "音でかすぎ" 等、様々な評価を受けているライブ・パフォーマンスの臨場感を損なうことなく、また、小ぎれいにまとめることもなく、可能な限りその音像を再現することに成功した、フル・テンション・アルバム。 是非、ヴォリューム・マックスで体感してほしい。

■The extreme music scene in Japan has always been known for being some-what strange. Bacteria, perhaps best known for supporting Der Eisenrost during tours, delivers a set of tracks that fit right in with that stereo-type; Scum is 16tracks of power-guitar playing with a disdain for chords or riffs, pounding percussion, occasional blasts from trumpets and saxophones, and miscellaneos, intensionally misplaced samples. this is one big slice of sonic chaos. most EBM fans won't find the sound to their liking. The usual industrial/EBM tropes (the drum machines, the predictable, danceable beats) are missing entirely. Bacteria really is more of odd combination of guitar noise band and jazz jam band. those readers who remember Zeni-Geva will more than likely appreciate this slab of sonic excess, but others who don't remember that first wave of japanese invasion may not.

INDUSTRIALNATION MAGAZINE #20. JULY.2004

BACTERIA official web site img http://www.bacteria00.com/